高齢ドライバーの交通事故報道の偏向に惑わされないで!

      2019/09/18

相次いで報道されている、高齢者ドライバーがかかわる交通事故。

それについて、偏った報道はやめろと記事に書いた後、

高齢ドライバーの交通事故について思うこと

いろいろな報道を読みかえしたり、統計を調べたりしたんですが、

どうも「高齢者の起こす重大事故が増えている」というのは、

ほとんどウソ同然、ということがわかってきました。

前の記事の続きを書いていきます。

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報道には偏向は必ずあるものだが・・

こういう偏向報道が続くのは、

教師や医者や弁護士がわいせつ事件を起こしたりするとことさらにデカデカと報道するのと同じで、

「45歳の男性がアクセルとブレーキを間違えた」というよりも、

「87歳の男性が、アクセルとブレーキを間違えた!またも高齢者が!」というほうが、

ニュースとして注目を集められるからでしょう。

そして、過失による事故で、

重大な過失があったかどうかもまだわからない段階であるにもかかわらず、

殺人や強盗のような重大犯罪と同じように実名報道をする。

 

報道が完璧に公平、中立であることはありえないのは理解できるのですが

(新聞や雑誌は広告主の影響を受けるし、NHKも完全に中立にはなりえない)、

今回話題にしている高齢ドライバーの事故の問題は、

「高齢者は運転するな」→「高齢者は外に出るな」

ひいては、「高齢者は社会のお荷物」みたいな差別・偏見につながりかねないので、

メディアは特に注意して報道するべきだと思うのです。

統計の見せ方が恣意的

先日、TBSの某情報番組では、

「交通事故件数」と「高齢ドライバーによる事故の割合」(東京)

の関係の推移グラフ(2005年から2014年)をみせていました。

それによると、「全体の交通事故件数」は減っているのに、

「高齢ドライバーによる事故の割合」は増えている、と言って、

高齢ドライバーの事故が増えている、説明していました。

 

これ、おかしいですよね。

全体に占める割合が多くなっているからって、「だから高齢者は危ない」

というふうにならないんじゃないか。だって、ドライバー全体に占める高齢者の割合は

どんどん増えているんだから。

以前は高齢者10万人あたりの事故件数がこれだけだったが、

いまは高齢者10万人あたりの事故件数がさらに増えている、という話なら、

「高齢者の運転は危なくなってきている」となるでしょうが、

高齢ドライバーの人数の増加率と事故件数の増加率について解説するテレビの番組は

まだみていません。

 

で、その次に、2015年の(今度は全国のデータ。さっきは東京のデータをみせていたのに!)

運転免許保有者数の、年齢別の構成の円グラフをみせていた。

それによると、全体に占める65歳以上の高齢者の割合は20.8%。

で、さっき見せられた「全体に占める高齢ドライバーの事故件数の割合」を見直すと、

そっちは「20.4%」(2014年の数字)。

ええ~?65歳以上の高齢ドライバーの人数の割合が20.8%で、

高齢ドライバーの事故件数の割合は20.4%?

ってことは、高齢ドライバーがとくに危ない、ってことにはならないじゃん!

 

2015年のデータと、2014年までしかないグラフを使って説明

(しかも、全国データと東京のデータ)するいい加減さもさることながら、

「交通事故」というだけで、単独事故も加害事故も、歩行中の事故も

自転車の事故も一緒くたなのかそうでないのか?もわからない。

 

でも、「交通事故件数」が右肩下がりで、

「高齢者の事故の割合」が右肩上がりだと、

いかにも「高齢者の運転は危険」と思わされそうになる。

 

で、そのあとに、ドライブレコーダーの映像でしょうが、

もみじマークをつけた車が一時停止無視や信号無視をする映像を

続けざまに見せて、いかにも「こんな危ないことするのは高齢者だけ」

みたいな刷り込みをしようとする。

いやいや、若者だってこんなことするやついっぱいいるだろ!!

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もっと問題にするべきことは他にあるだろ

先日、「ポケモンGO」をやりながら児童をひき殺したバカは、

報道によると36歳。36ですよ、36!!

気力も体力も充実しているはずの30代の、もはや殺人にひとしい事故よりも、

アクセルとブレーキを踏み間違えた高齢者の事故のほうが

ギャーギャー騒がれているのです。

 

私の経験上、運転しながら携帯で話してたりとか、

車間距離ギリギリで後ろにくっついて走ったりとか、

高速道路で後ろから煽ったりとか、

追い越し禁止の場所で追い越していったりとか、

そういった危険な運転をするやつの顔をみたときに、

おじいちゃんやおばあちゃんであったことはほとんどない。

中にはいるでしょうが、そういう無謀運転者は圧倒的に

若者もしくは中年、つまり高齢者以外。

無謀運転者の免許を取り上げることは考えず、

安全運転している高齢者には「免許返せ。返せ」と騒いでいる。

たしかに、認知症などあって安全運転が不可能なら、運転をやめてもらわなければ

ならないが、いまの報道は元気な人も認知症の人も一緒くたで扱っている。

若い人には想像できない運転ミスをクローズアップしているだけじゃないか

こんなデータを見つけました。

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出典:高齢運転者支援サイト

さきほどもちょっと書きましたが、

免許保有者10万人あたりの交通死亡事故件数。

これによると、10万人あたりの死亡事故件数は、

16~24歳の若者のほうが多いのです。

 

ただし、「免許保有者数」での比較なので、ペーパードライバーなども含まれているし、

「交通死亡事故」には、歩行中の事故や自転車での事故も含まれているでしょうから、

単純に「高齢者の運転が危ないかどうか」を判断できるものではないと思います。

しかし、認知機能は高齢者より優れているはずの16~24歳が、

認知機能の衰えは絶対にあるはずの高齢者よりも多く、交通死亡事故にかかわっている、

というのはわかる。

白内障で目もまともに見えないような高齢者より、若くて元気な16~24歳のほうが

事故ってるんですよ。

 

まあ、若年者は運転技術が未熟、高齢者は認知機能が衰える、ということで、

ある意味当たり前のことを示す統計なのですが、

「高齢者が特に危ない」ということにはならない、ということがわかるのではないでしょうか。

 

さらに、こんなのも。

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出典:政府統計の総合窓口

これは平成25年までしかないですが、

運転免許保有者数は圧倒的な勢いで増えている(10年前と比較して175%に)のに、

「自動車運転中死亡事故」(←ここが重要!ほかの統計は、歩行中にはねられたりしたのも

含めちゃっている)は、24年から微増しているものの、

10年前と比較して85%まで減少している。

いいですか、「減っている」んですよ。

 

テレビなどの報道は、なんとかして

「高齢者は危ない」というふうにもっていきたいので、

こういう統計があったとしても見せない。

実際には、高齢者の起こす交通事故は減っているのに、

「全体に占める高齢者の事故の割合が増えている」とみせることで、

「高齢者の事故が増えている、と思わせている。

 

高齢のドライバーが増えていて、高齢者でないドライバーが減っているんだから、

割合が増えるのは当たり前なのです。で、ドライバー数が増えているのに、

「自動車運転中死者数」は減っている。

これはつまり、高齢者講習や認知機能の検査、免許返納の促進などの

効果が表れている、ということなんじゃないか。

 

マスコミはセンセーショナルな話題を提供したいので、

「ええ~、そんな馬鹿な!」と、若者が思うような、

一部の高齢者のトンデモ運転をクローズアップするのです。

そこに注意しながら、報道に接しなくてはならない。

もっと丁寧な議論を

車が運転できないと生活できない高齢者の話題で、

どこかの評論家みたいな人が、

「近所の病院や買い物に行くだけなら、車を保有するよりも

バスなどを使ったほうが安上がりになる場合もある。だから免許返納を」

みたいなことを言っているのを見ました。

半分は賛同できますが、とても乱暴な意見だと感じました。

 

まず、公共交通機関のほうが安上がり、というのは、都市部だけで通用する話で、

田舎ではそうはならない。「近所」というが、

私が住んでいるところ(人口約7万弱の市)ですら、一番近いスーパーは6キロくらい離れている。

もっと過疎地ならさらにたいへんでしょう。

コンビニはもっと近いが、年金生活のお年寄りが毎日コンビニで済ますことはできない。

「近所の病院」というが、かかりつけの医院ですめばまだしも、

高齢者の場合、町医者では対応できない病気になることも多く、

そのたびに紹介状をもたされて、遠くの大病院に行ってくれと言われるわけです。

で、そこまで何度も通わなければいけなくなったら大変です。

電車で行くとしても、そもそも駅が遠い。駅までバスに乗ったら1000円もかかったりする。

 

さらに一番気に障るのは、「近所の病院や買い物にいくだけなら」というのは、

「どうせジジババの用事なんてそれくらいだろ。それ以外は家でじっとしてればいいじゃん」

という意識が見え隠れしてしょうがない。

こういう評論家が、老人の孤独死の問題とかになったら、

「もっと外に出て人と交流を」とか、したり顔で言うんでしょうね。

 

とにかく、もっと丁寧に報道し、丁寧な議論を喚起してほしいのです。

なんとかしなければならないのは、「認知症など、正常な運転をできない高齢者が運転している」

ということなのに、「高齢者が運転している」ということが問題になっちゃってる。

 

一連の報道によって、「高齢者は社会のお荷物」という意識が形成されることは

非常に恐ろしいことだと感じています。

 

高齢ドライバーの認知機能検査や免許返納の促進を強化するのは

けっこうなことで、免許を返納したあとのフォロー、交通手段の確保などの施策が

重要であるわけで、そのあたりをどのようにしていくかということを、

丁寧に考えたいと思います。みんないつか高齢者になるんだから。

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それではまた。

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