「文藝春秋」7月号に、
「理想の介護と最期」という特集があったので
買って読みました。
amazon.co.jp 文藝春秋 2018年 07 月号 [雑誌]
いろいろ興味深い話が多かったのですが、
とくに在宅医療や在宅での「看取り」についての話は
刮目すべき内容でした。
そのあたりについて思ったことを書いておきます。
「オンライン診療」なるものは知らなかった
今回は在宅医療について。
自宅で最期を迎えたい、というのは
多くの終末期の方が抱く気持ち
(私の亡父もそうでした。叶いませんでしたが)であり、
そうした終末期の高齢者や患者の希望にこたえるためには
在宅医療というものにはすごくニーズがある時代になった、といえるでしょう。
特集記事では、在宅医療を中心とした診療所を運営する
医師の武藤真祐氏が、
在宅医療の現状について話をされていました。
武藤氏が代表取締役をつとめる(株)インテグリティ・ヘルスケアでは
導入する医療機関が増えているそうです。
武藤氏によると、
在宅医療は「一部の医師たちの身を粉にするような働きによって成り立っている」
のが現状。
しかも在宅医療を担うのは医師だけではなく、
看護師やケアマネージャーやヘルパーなどのスタッフによっても支えられているわけで、
とくに地方などでは人手が足りてない。
そんななかで有効なのが「オンライン診療」である、と。
オンライン診療とは、パソコンやスマホでのビデオチャットなどを通じて診察を行うシステム。
このオンライン診療のメリットが記事にはたくさん書かれていましたが、
個人的に「たしかにそうだ。これは有効だ」と思ったのは、
「在宅医療の現場では、医師が患者や家族から呼び出されることはよくありますが、じつはその大半は、実際には即座に駆け付ける必要がないもの。電話で話をすればそれで済んだり、明日まで待っても大丈夫というケースがほとんどなのです。しかし、患者や家族は、ちょっとした異変でも不安になり、あわてて医師を呼び出してしまう。こうしたとき、ビデオチャットでお互いに顔を見ることができれば、患者や家族に落ち着いて話をしたり、患者の異変の状況を見ながら的確な指示を出すことができる。オンライン診療を活用することで、在宅医療の医師の負担は大いに軽減されるはずです。」
という部分。
「負担」という意味で言うなら、これは患者のほうも同じですね。
わざわざ病院へ行って何時間も待たされたりする負担の軽減につながる可能性がある。
亡父が痛みに苦しんだ夜を思い出した
私の亡父や母、そして私自身のかかりつけのクリニックも
クリニックへ通うのが困難な患者を対象に
「在宅医療」を実施していて、
月に2回以上の訪問診療、
さらに緊急時には24時間体制の臨時往診の体制を整えている、とのこと。
しかしこれはたいへんだろうなあ~。
患者にとってはたった月に2回以上の訪問診療でも、
たくさん対象者がいれば医師やスタッフは相当忙しくなるのでは。
24時間体制の臨時往診も、現実的には
「救急車を呼んでください」となるんだろう・・と思えます。
私の亡父は、晩年にはいたるところに病気を抱えていて、
足の付け根の骨折をきっかけに寝たきりとなり、
そのまま亡くなりました。
亡くなる1年くらい前、入退院を繰り返して病院と家を行ったり来たりしていた時期があって、
(とにかくいろんな病気をもっていましたから)
家にいるときにいきなり「~が痛い、苦しい」とか言い出すことがありました。
いちおう痛み止めなどをもらっていましたが、
それを使っても痛い、苦しいという。
こういうときに本当に困るのです。
こりゃあほんとうにヤバいかも、となれば救急車を呼びますが、
どうもそうでもないらしい、というときに、
パソコンなどで医師や看護師さんなどに相談できれば、
本人も介護する側も安心できるし、
明日まで待っても大丈夫なのか
いま救急車を呼ぶべきなのか判断できるわけで、
それを思い出すと「オンライン診療」は
在宅で療養する患者とその家族にとっては
かなり有益なものになるんだろうな、と感じました。
「医師と向かい合って話すことができる」
もうひとつ興味深かったのは、
オンライン診療を利用した患者から
「医師と向かい合って話すことができる」
という肯定的な評価が寄せられた、という話。
これは多くの人が経験があると思うんですけど、
私がいま通っている耳鼻科のセンセイなど、
私がいろいろ質問しても(こちらから訊かないとなにも教えてくれない)
カルテになにか書きながら早口で答えるだけで
私のほうを一切見ない。
まあ、私の耳鼻科のセンセイはそれでもちゃんと答えてくれるんですけど、
ヒドイ医者になると質問したりするとあからさまに「めんどくせえなあ」という態度をとったりするのもいますね。
私はこういうときに「めんどくさいんですか?じゃあ他の医師に訊くからもういいです」って言っちゃうんですけどね。
そう言ったら逆ギレされたことがありまして、
医者という人種は
若いうちに「センセイ」と呼ばれるようになり周りの人間から持ち上げられて仕事をするせいなのか、
勉強ばかりしてて一般的な社会経験が少ないからなのか、
あまりにも忙しいからなのか、
私のように反逆する患者に出会うと気色ばんでしまうような幼稚な人間が多い気がします
(横柄な人間の態度をちょっと我慢するということができない私も幼稚ですけどね)。
基本的に自分はエライと思っているから、
素直に「すみませんでした」ということができない。
今回の武藤センセイの記事にも
「病院という閉鎖的な空間では、医師は『自分が一番偉い』と思いがちです」と
ありましたが、患者は医師にだまって従うのが当たり前だと思っている医師は
いまだに多く見受けられますね。
ヒドイ医者の話はとりあえず置いといて、
「オンライン診療」のビデオチャットでは
さすがによそ見しながら話すわけにはいかず、
目と目を合わせて医師と話ができる、ということで
患者の満足度は高い、んだそうです。
オンライン診療はあくまでも対面診療を補完するものだけれども、
これまでの医療にオンライン診療のようなITを組み合わせることで医師の負担が軽減され、
患者も質の高い医療を受けられる・・・ということらしい。
ていうか、「カオをみて話をする」ということすら
できてない医者が多い、っていうことがまず
ものすごく問題なんじゃないか、っていう気がしますね。
それが浮き彫りになる、という意味で
オンライン診療はすごく有意義なことだとは思いますけど、
医師を養成する教育にそもそも問題があるのでは?
できることなら在宅で介護、在宅で看取る・・のが理想だけれど
ともかく、医療を提供する側の負担が軽減できて、
患者側も在宅での療養や介護を安心してできる、
ということなら、どんどんITを活用した医療を進化させてほしいですね。
そうすれば、施設などをつかわずに自宅で介護し、自宅で看取る、
という選択をできる人も増えていくかもしれません。
私の亡父も入院したり施設に入ったりしたとき
「家へ帰りたい、どうせもうすぐ死ぬんだから、死ぬときは家で死にたい」と言いましたが、
結局それを叶えてあげることはできませんでした。
認知症の母をかかえた状態で父をも介護することが不可能だったからですが、
これを叶えられなかったことは私にとって一生後悔するであろうことです。
オンライン診療など、在宅医療、在宅での看取りをサポートするものがどんどん広がると
いいな、と思います。