あの手この手で高齢者を騙し、おカネをかすめ取るいわゆる「オレオレ詐欺」。
警察庁はこの類の詐欺を「特殊詐欺」と総称していて、その定義を
「特殊詐欺」とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及び隙を見てキャッシュカード等を窃取する窃盗を含む。)の総称をいいます。
としています。(警察庁の特殊詐欺対策HPより引用)
同HPにあった統計によれば、
令和元年の特殊詐欺の認知件数は8月までで10,942件で、前年同期比534件減。
ちょっと減っているけれどこれは「認知件数」ですからね、実際には騙されたとも気付かず警察にも通報してない場合もあるでしょうから、誤差の範囲内と言えるんじゃないでしょうか。つまり、依然として深刻な状況。
今回はこれについて思うことを書いてみたい。
なじみのホールでよく会う、顔見知りのおばあちゃん
わが地域のように高齢化率の高い土地で毎日パチスロを打っていると、
高齢スロッターの目押しをしてあげる機会がけっこうあります。
それが度重なると顔を合わせれば挨拶するような感じになるわけですが、
そういう経緯で顔なじみになったあるおばあちゃん。
いつもちょっと挨拶して、ボーナスが入れば目押しをしてあげるだけで、
素性はお互いにまったく知らないのですが、
おばあちゃんはなにかというとすぐに私になにかをくれようとします。
前に →他人の台の目押しをすることについて の記事で、
「コーヒーだのをくれたりされても有難迷惑だからやめてほしい」と書いたことがありますが、
このおばあちゃんの場合はコーヒーどころではない。
100枚くらいのメダルを「帰るからあげる」といって持ってきちゃうし、
あと1000枚は確実に出るくらいのゲーム数が残ったARTをくれようとしたりしちゃう。
私が「もったいないから!」と言って固辞すると、
「いいの!いつも世話になってるんだから!もらいなさい!」
と言って真顔で怒る。
で、仕方なく受け取ると喜んで帰るのです。
この流れでもらった台で5000枚くらい出ちゃったこともあったりで、
さすがに私ももらいっぱなしにできず
近所のスーパーの商品券でお返ししたりしたのですが、
このように他人になにかをしてあげようとする、なにかをしてあげて喜びを感じる、というのは、
高齢者に限った心情ではないにしろ、トシを重ねるほどに増大してくるものらしい。
高齢者が騙されやすいのは・・・
私の亡父も体を壊してからも「なにかやらせろ。役に立ちたいんだよ」と言って家事をいろいろやろうとしたし、
いまは認知症で話すこともできない母も、
兄の嫁から子守だのを頼まれれば喜び勇んで引き受けていたし、
私が「セーター買おうかなあ」なんてポロっと言ったら次の日には毛糸を買ってきてつくり始めていたし、
認知症が始まってからも頼んでもいないことをとにかくやろうとしていた。
老人ホームのような施設でも、お年寄りになにか仕事を頼むとみんな喜んでやるらしい。
このように、お年寄りはとにかく自分の出番が欲しいというか、だれかの役に立つことを喜びと感じる人が多いようで、それはとても自然に生まれてくる心情なのでしょう。
私ですら、甥や姪が遊びに来ると、とにかくなにかをしてあげたくなる。彼らが興味を持ったものはすぐにあげちゃう。
こういった「他人の役に立ちたい」という心情を利用するのがいわゆる「オレオレ詐欺」なわけだ。
思うに、高齢者が騙されやすいのは、判断能力が鈍ってるからとかいうことではなく、
若い者が困ってると訴えてきたらそれをなんとかしてあげたい、と思う気持ちが強い人が多いからなんじゃないでしょうか。
電話口で詐欺師に「お金を落とした」だの、詐欺師でなくとも営業マンに「仕事がないと困るんです」だのと言われれば、それがたとえ息子じゃない人間だったとしても、
「あらそう。大変だねえ。なんとかしてあげられないものかねえ」と考えるのが、お年を召した方の典型的な思考なのでしょう。
特殊詐欺をはたらく人間はこういった純粋な心情を高齢者がもっていることを知っていて、それを利用して騙そうとする。
これはもう、万死に値するほど罪深い。
詐欺罪の量刑は軽すぎる
詐欺罪でつかまった場合、その量刑は「10年以下の懲役」と定められているようです。
何件もやってれば合算されてもっと増えることもありますが、
1件ならば10年を超えることはないわけですね。
いやあ、もっと重くてもいいんじゃない?
私はなにかというとすぐに厳罰化、という流れには疑問をもっている(たとえば高齢運転者の事故に厳罰を科したところで問題の解決にはならない)のですが、
さきほども書いたように、圧倒的に外道そのものの犯罪である詐欺に関してはこれでは軽すぎると感じます。
組織的詐欺の主犯格には無期懲役でもいいんじゃないか(心情的には死刑でもいいくらいですが私は死刑には反対)。
漫画「賭博黙示録カイジ」には
「金は命より重い」という有名になった言葉がありましたね。
それが正しいかどうかは別として、私のようにギャンブルで得たあぶく銭で生きてる人間のカネならともかく、
自分の人生のなかの多大な時間を費やし、文字通り自分の命を削って稼いでコツコツ貯めて堅実にまじめに生きてきた人間のカネというのは、
まさに命と同等なくらいの重さをもっているでしょう。
そういう重みをもったカネを口八丁手八丁で、しかも親切心につけこんで騙し取るというのは殺人と同じようなもの。
殺人罪の量刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役ですから、詐欺罪も上限をそれと同等にするべきでしょう。ああ、死刑はダメだから、やはり最高刑は無期懲役にするべきだ。
敬老の精神が培われないから、詐欺が増えるのも当然か
とはいうものの、若い奴が特殊詐欺などをはたらいてしまうのは、
敬老の精神が失われた現在の社会と時代の流れから必然なような気もします。
昔は高齢者が少なく、現役世代も経済的に余裕があったから長寿はめでたいことと認識されていたし、
インターネットのような調べればすぐにたいていのことがわかっちゃう便利なものも存在しなかったから、高齢者の知恵や知識は若年者に重宝され、尊敬もされた。
それがいまでは「高齢者は社会のお荷物」と言ってはばからないような人も多い始末。
高齢者を敬う気持ちが社会全体にないから、
カネをためこんでいる高齢者にカネを吐き出させてなにが悪い、
と考える阿呆ばかりになってしまうのでは。
そうするとやっぱり、少子高齢化に歯止めをかけ、人口を増加させ、経済を再生し、社会保障制度を持続可能にし、現役世代が高齢者を敬う余裕がある社会にする・・
ということが必要になってくるんでしょうけど、
政権を握っているのが国民に嘘八百を並べるのも平気の平左、権力をもっているだけに特殊詐欺集団よりも圧倒的にタチが悪いあの政党では、
それもいい方向へ行きそうにない。
政権政党への文句を書き始めるときりがないのでこのへんにしておきますが、
とにかく特殊詐欺がもっと減ってほしい。
先述の、私の顔なじみのおばあちゃんみたいな人がその財産を騙し取られることを想像してみるだけでどうしようもなく悲しくなってきます。
嫌な世の中だなあ。