このブログでは高齢者の運転の問題について何度か書いていまして、
私自身も自動車が生活に必要不可欠な地域に住んでいることもあり、
自動車業界の話題には少なからず興味をもっています。
自動車メーカーにはいろんな意味で不満しかありませんけどね。
で、カルロス・ゴーンの事件から西川社長の退任など、
マイナスなイメージの話題しか出てこない日産自動車がさきごろ出した
新型スカイライン。→日産自動車 新型スカイライン Special Site
これには「プロパイロット2.0」と呼ばれる運転支援システムが搭載されていて、
その目玉は、条件を満たした場所、状態の高速道路であれば
手放し(ハンズオフ)、もちろん足もオフ、で運転できる・・・
ということらしい。
自動運転 レベル2
いわゆる自動運転はその段階ごとに「レベル」が定義されています。
フォルクスワーゲンのサイトの説明が詳しかったので引用させてもらうと、
レベル0→ドライバーがすべての操作を行う。
レベル1→ステアリング操作か加減速のいずれかをサポートする。
レベル2→ステアリング操作と加減速の両方が連携して運転をサポートする。
公道最高水準(2017年7月時点)
レベル3→特定の場所ですべての操作が自動化、緊急時はドライバーが操作。
レベル4→特定の場所ですべての操作が完全に自動化される。レベル3同様、特定の場所に限りクルマが交通状況を認知して、運転に関わる全ての操作を行います。さらにレベル4では、緊急時の対応も自動運転システムに操作を委ねます。自動運転システムを利用している限り、ドライバーの運転操作はもはや必要ありません。
レベル5→あらゆる状況においても操作が自動化。ハンドルもアクセルも不要。
ということになっているらしい。
よく読むと、レベル1とレベル2は「自動運転」ではなく「運転支援」であることがわかりますが、
今回の新型スカイラインに搭載されている「プロパイロット2.0」は、
レベル2の「運転支援システム」。
いまのところ、日産に登録したクルマで、日産が指定している高速道路で、システムをつかえる状況下で・・・というめんどくさい条件を満たした状態でなら、
手放しで走行し、車線変更とか高速から降りたりとかいったことも自動でクルマがやってくれる・・らしい。
手放しでOK、といっても、
ドライバーは必ず前を見ていなければならず、
ドライバーが居眠りしたりしてるとそれを検知して安全確認したうえでクルマを停止させる
機能もあるとのことです。
ふ~ん・・・
クルマの技術開発にかかわる人など自動車業界人であれば
「凄い!」という技術なんでしょうね。
しかし・・一般ドライバーにとっての実用性は、
残念ながらあんまりないんじゃないか、と言う気が・・・。
というのは、これは運転者が「ラクできる」というだけじゃないんですか?(しかも運転者は「機械の運転を監視」し続けなければならないので、たぶんそれほどラクでもないと思う)
ということです。
自動車メーカーはレベル5の「完全自動運転」を目指してしのぎを削っているけれども、
なんか方向性というか思想が間違っている気がするのです。
「運転をもっとラクに」を追求してきたから・・・
昨今よく報道される「ブレーキとアクセルの踏み間違い」による事故。
これについて
「そもそも、人間は間違えるのが当たり前、という前提に立ってないオートマ車そのものが危険なシロモノだからだろ」
ということを以前に記事にしました
だから私はオートマ車を所有したことがないし、これからもそのつもりはない・・・
のですが、オートマ車が誕生したのはとどのつまり
「ラクにカンタンに運転できるように」ということですよね。
そのほうが売れるから。
行政の側も、もっとクルマが売れるようにと「オートマ限定免許」なるバカな制度をつくりだしてしまった。
これだけ優遇されてる業界だから、放漫経営の会社ばっかりでもやっていけるわけだ。
まともな経営者ならば
「そもそもオートマチック車が間違えるのが必然のシステムだから事故が起こるんじゃね?」
という考えに至ると思うんですけど、
そこをなんとかしようという人は自動車業界にはいないんですかね。
ムリか。いまさらオートマ車の欠陥を認めたら「いままでそれをわかりつつ売ってたの?」と批判されちゃうでしょうしね。
それはともかく、もっとラクに、もっとカンタンに・・・
を追求した結果、
「アクセルとブレーキを踏み間違えて急発進して大事故」とか、
「ポケモンGOをやりながら運転して大事故」
とかいうことが起こるようになってしまったわけですよね。
片手での運転が困難ならスマホを片手に運転しようとはあまり考えないはずだし、
マニュアル車なら「間違って急発進」という事態の可能性は圧倒的に低い。
もっとラクに、を追い求めた結果がアクセルとブレーキの踏み間違いによる悲惨な事故。
これは予見可能なことなはずなのに、
自動車メーカーはその誤りは絶対に認めない。全部ドライバーの責任にする。
人間は絶対に間違えるのだから、ちょっと踏み間違っただけで大事故になるようなものを何十年も売り続けていたメーカーのほうがおかしい・・
という論調が出てこないのが情けない。
ならば、自動運転だの運転支援だのといったテクノロジーは、
ラクさを追求するという方向で開発してはいけない気がするんですよね(身障者などを支援するクルマは別)。
事故を減らすには?という方向でなくてはいけないはずなのでは。
三菱自動車のeKクロスのCMでは、
「マイパイロット」という、スカイラインの「プロパイロット」と同じような運転支援機能が紹介され、
そこで竹内涼真が言うのは
「すっげーラク」というセリフ。
→ YOU TUBE eKクロス「MI-PILOT」篇 30秒
ここに自動運転、運転支援に対する自動車メーカーの姿勢が表れている気がします。
ラクであるということをアピールして、もっと儲かりたい。
いやいやいや、ラクさを追求するから90歳のおじいちゃんとかでも運転しようとするんだし、
酒飲んでも大丈夫とかスマホ見ながらでも大丈夫とか思っちゃうバカが運転しちゃうんでしょ?
手放しで運転できるとかそんなことを一生懸命やる前に、
事故を減らすためにやるべきことがいくらでもあるのでは。
結局、儲からないことはやらないんだろ
だいたい、いま話題の「あおり運転」だって、
自動車メーカーがその気になればいくらでも防止できるでしょう。
高速道路で車間距離をたもつ技術はすでにあるんだから、
高速でも一般道でも速度に見合った車間距離がなければ勝手にブレーキがかかるとか、
お得意のAIを駆使すればそんなシステムはいくらでもやれるはずなのでは。
それからたとえば、飲酒運転を防止するために
アルコールを検知したらエンジンが始動できないといった機能。
もう10年くらい前から開発されているはずですが、
いっこうに普及しない。
車間距離を詰めたら止まっちゃうクルマとか、飲酒運転を防ぐクルマとか、
そういったものを一生懸命やらないのは結局
「そんなもんをカネをかけてつけても売れないし儲からない」からでしょ?
自動車メーカーではこういうやりとりが起こったに違いない。
「アルコール検知装置をつければ、飲酒運転を撲滅できますよ!」
「・・・それで売れるの?費用に見合ったリターンはあるの?」
「売上にはつながりませんが、事故は減ります」
「事故が減ったって儲からねえんじゃ意味ないだろ。飲酒運転なんてドライバーの責任なんだから放っておけよ」
・・といったところじゃないでしょうか。
どこのメーカーも検査の不正とかをやってることからも、
安全よりも儲けを優先していることは容易に想像できます。
それは私が想像してるだけだからもちろんそうじゃないかもしれませんが、
いちユーザーとして私にはそのようにしか感じられない。
どこかのメーカーのCMの
「私たちは交通事故をゼロにしたい」という言葉も
ものすごく空々しく感じられます。
いやいや、絶対にそんなことまじめに考えてないんでしょ。
自動運転車よりも、ヒューマン・エラーを完璧にサポートするクルマをつくってほしい
の記事でも書いたのですが、
私は「レベル3」以上の自動運転はファンタジーでしかないと思っています。
今回のスカイラインの運転支援システムでもそうですが、
もし万が一事故が起こったらドライバーの責任なので
(メーカーは、レベル5の完全自動運転が実現したとしてもここを変えるつもりはないらしい)、
機械が間違えそうになったらドライバーがフォローする・・というかたちになる。
そんな難しいことができますかね。お年寄りならなおさら。
教習所のセンセイじゃないんだから。
あっ、なんかヤバい・・と思った時にはもう事故ってるでしょ。
なので、私は
あおり運転や飲酒運転のようにドライバーがアホなことをしたらそれをとめる、もしくは是正する機能、
踏み間違いのようなヒューマン・エラーを防止する機能、
死角をフォローする機能・・など、
人間の能力が足らないのを補完する機能を
極限まで追求してほしいなあ・・と思います。
運転はラクすぎてはいけない。
ラクすぎるから居眠りとかしちゃうんだから。
運転がそれなりにキツイ作業であるなら免許を返納するお年寄りだってもっと増えるでしょ。
自動車メーカーが、事故を防ぐのがなによりも最優先、という方向になってくれないかぎり、
これからも交通事故で毎年何千人も死んでいくでしょう。
「手放し運転が可能」という「プロパイロット2.0」の情報に触れつつ、
そういったことを考えました。
技術は凄いんだろうけど・・・なにかこう釈然としない。「凄い!」という気持ちにはならない。