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母が要介護4になりました~介護保険の区分変更の話~

1年前の年末年始には、かろうじて自宅で過ごすことができ、

会話もなんとか意味が通じていた私の母も、

その後老人保健施設へ入居し、

認知症の進行で意思の疎通ができなくなったりと、

2016年は母にとっても動きの多い年になりました。

今回はその母の要介護度が上がっちゃった話です。

食事が全介助でないと不可能に

入所している老人保健施設(老健)の相談員さんから電話が。

要するに、認知症がすすんで、介護にかかる手間が増えたから、

介護度があがる可能性があるので、区分変更申請をしていいか、ということでした。

 

いままでは「要介護3」だったけれど、

さらに介護度があがるかもしれない、というわけです。

その理由として言われたのが、食事が全介助出ないと不可能になった、ということ。

 

老健に入所当時は、目の前に食事を出されれば自分で箸をとって食べていましたが、

いまは自発的に食べることができなくなりました。

目の前にあるものが「食べるもの」という認識もない。

ほんとうにおなかが減っているときのみ、スプーンを口に当てられれば口を開くという感じ。

 

で、区分変更のために市の職員が母に会いに来て、

結果は要介護3だったのが要介護4に。

要介護度は、介護にかかる手間の量で決まる

厚生労働省のHPによると、

1. 要介護認定は、介護サービスの必要度(どれ位、介護のサービスを行う必要があるか)を判断するものです。従って、その方の病気の重さと要介護度の高さとが必ずしも一致しない場合があります。

  • [例]認知症の進行に伴って、問題行動がおこることがあります。例えば、アルツハイマー型の認知症の方で、身体の状況が比較的良好であった場合、徘徊をはじめとする問題行動のために介護に要する手間が非常に多くかかることがあります。しかし、身体的な問題が発生して寝たきりである方に認知症の症状が加わった場合、病状としては進行していますが、徘徊等の問題行動は発生しないため、介護の総量としては大きく増えないことが考えられます。

 

私の父が骨折をしてほぼ寝たきりになったときも要介護4になりましたが、

このときの父には認知症はなく、食事はベッドの上に起き上がって自分でとることが

できるけど、トイレには行けないので排せつはおむつで全介助。

 

母の場合、支えてやれば自分で立ち上がるし歩ける。

トイレに連れて行ってやればなんとか自分で排せつできるが、

認知症は進行していて食事は自分でできず全介助。

 

病状は異なるけれども生活全般にわたって介助が必要ということでどちらも要介護4。

スタスタ歩いて元気でも、24時間見守りが必要なら介護度は高くなるし、

車いす生活でも自分でなんでもできれば介護度は低くなるわけです。

介護度が上がったらどうなるか

今回は施設のほうからの申し出で区分変更となったのですが、

介護度があがることによって施設側と利用者側、それぞれどんなメリット・デメリットがあるか。

まず、施設側。

私の母の介護にかかる手間がどんどん増えて、

たとえば食事をさせるために、ひとりの職員さんが数十分の時間をそのために費やさなければ

ならなくなったわけで、手間が少なかったときと、手間が多くなった後が同じ利用料金なのは

おかしい、というわけで、区分変更をさせてくれと私に言ってくるのは当然と言えば当然です。

区分変更をして介護度があがれば、介護サービスの単価が上がり、

そのぶん、利用料金の収入が増えます。

現場の介護士さんたちは苦労がふえるわけですが、

経営者にとっては(たぶん)そのほうがいいんでしょう。

 

そして、利用者側。

利用者側は、施設の利用代金があがってしまうわけで、なるべく介護度はあがってほしくない

のは当然です。

ただし、現在は要介護3以上の介護度でないと

特養(特別養護老人ホーム)への入居申し込みが原則できなかったりするので、

要介護1や2なために特養への申し込みができない、とかいう場合には、

介護度があがったほうがメリットがある場合もあります。

さらに、在宅で介護している場合、介護サービスの単価は上がりますが、

介護保険の支給限度額も多くなるため、施設に入っている場合よりも

被保険者にとってはメリットが大きい場合も多いです。

なので、すでに要介護3、特養への申し込みもすでにしている私の母の場合は

とくにメリットはないわけです。

 

で、法律上は、区分変更を保険者である市町村に申請するのは

被保険者の権利であるため、施設側はかってに申請することはできない。

施設のほうは私に「申請させてもらえないか(申請を代行させてもらえないか)」

と電話してきたわけです。

拒否することもできるはずだが

だから、今回のようなケースの場合、

私は「いや、今の状態なら要介護3じゃないんですか」と言って、

申請を断ることも、制度上は可能だったはずです。

しかし、現に生活全般にわたって介助が必要になってきている状態で、

要介護3に認定されたときよりも手間がかかるようになっているのは事実で

私もそれをみているし、そんなことで施設側と軋轢がうまれるのも嫌だったので

「はい。わかりました。お願いします」と答えましたが、

なかにはゴネる利用者家族もいるでしょう。

 

ここで私が気になったことについて少し書いてみたい。

介護度が高いほうが儲かるなら・・・

介護施設の台所事情は知らないので間違っていたらすみませんが、

おそらくは介護度が高い人に単価の高いサービスを

提供したほうが、施設は収益があがるでしょう。

そう考えると、利益を追求しなければならない施設側としては、

ジレンマが生じないか。

 

そもそも、母が入所している「老人保健施設」はそもそもどういう施設なのか。

全国老人保健施設協会のHPにはこのようにかいてありました。

「ろうけん=介護老人保健施設」は、介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師による医学的管理の下、看護・介護といったケアはもとより、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設です。

 

つまり、本来は自宅での生活へ戻ることを支援する施設なのです。

現実には私の母のように特養へ入れない(入るまでの)人の受け皿、事実上の特養のように

なっていて、そこも問題にされているようですが、とにかく本来は

リハビリをやって自立するための施設。

でも、リハビリを一生懸命やったら、介護度が改善し、収益は減る。

老健の場合はそれで自宅復帰できるようなら退所してもらってまた新たな入所者を

迎えればいいわけですが、そうもいかない場合も多いでしょう。

特養の場合はなおさらで、終身で住むのが前提ですから、

要介護度を改善しようと努力することじたい、利益を考えれば無駄ということになる

(現場の介護士さんは違うでしょうが、経営者にとってはそうでしょう)。

要介護度を改善した場合に報酬が発生する制度を・・・と思ったが

要介護度が悪化すればするほど儲かるのなら、薬をのませて寝かせとけば楽、

ということになってしまうでしょう。

そうならないためには、要介護度を改善したら施設運営側になにかいいことがある

制度をつくらなければならないのでは・・・

と思っていろいろ調べると、そういう動きもあるようです。

しかし、そうすると、

「改善が見込める人だけを選んで入所させる」という施設が出てくることも考えられる、

ということで、なかなか難しいようです。

こちらの記事が勉強になります→特別養護老人ホームみかんの丘 理事長のつぶやき

いろいろ難しい面もあるようですが、

施設に預けている家族としては、要介護度が改善してくれたほうが

嬉しいことは嬉しい(退所を迫られると困るけれども)ので、

要介護度を改善する努力が特に職員さんの報酬につながるような

システムにならないものかと思います。

もし要介護度が改善した場合

もうひとつ気になったのは、

仮にリハビリが効果をあげて状態がよくなり、

ひょっとして区分変更申請をすれば要介護度がさがるんじゃないかという場合、

施設側はどうするんだろうということ。

要介護度が改善すれば施設は収入が減るわけで、その場合施設側は

「よくなってきたから区分変更申請したらいかがでしょうか」と家族に言うのか。

 

家族側からはこれは言い出しにくいと思うんですよね。

ふだんの生活ぶりはあまりみていないし、

良くなってきたからといって退所させられても困る。

区分変更の申請は被保険者の権利なので、申請するのは自由なのですが、

施設側とは良好な関係を保ちたいというのもあるので、

施設側の意思に反して申請するのも憚られますよね。

 

だから、もし「要介護度が改善したから区分変更してはどうでしょう」

とか言い出す施設があれば、その施設はほんとうに信頼できる施設ということに

なるのかな、と思いました。

 

いろいろ書きましたが、私の母の介護の手間がどんどん増えているのは事実で、

要介護3から4になってしまってもまったく文句はありません。

文句どころか感謝しかないです。

しかし、ごく稀にでしょうが利益をあげるために区分変更申請を

どんどんしようとする施設もあるかもしれないわけで、

なにもわからないうちに介護度が上がってた、なんてことにならないように、

施設側とよくコミュニケーションをとったり、

介護保険制度について勉強したりすることは必要かなと思います。

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