高齢者の万引き

   

万引きなどの窃盗で検挙される高齢者が増えているらしいです。

高齢者自体が増えているから、経済的に困窮する高齢者が増えているから、独居で社会的なつながりの少ない高齢者が増えているから・・・・

など、さまざまな原因があるようですが、

「認知症」が高齢者に犯罪行為をさせる、ということも多々あります。

 

私の母も、元気に歩き回っていたころは目を離すとなにをしでかすかわからず、

もし私と同居していなければ万引きの2回や3回はやったかもしれないと思われるし、

私自身も将来は寂しく貧しい独居老人になることは確実ですから、

こういった話は他人事ではないです。

「前頭側頭型認知症」

認知症の原因となる病気は数多くありますが、

大部分は下記の4つが占めているといわれています。

「アルツハイマー型」「脳血管性」「レビー小体型」「前頭側頭型」。

それぞれが特徴的な症状をもちますが、これらが複合して認知症を引き起こすこともある。

 

で、「前頭側頭型認知症」は、社会通念に沿った行動ができなくなるとか、他人に気を使うことができなくなるとか、

つまり人間らしさが失われていく、という症状が現れるらしい。

その影響で、自分の行動が正しいかどうかにかかわらず、自分の思った通りに行動し、

その結果万引きなどをしてしまうことがあるとのこと。

物忘れよりも性格の変化が現れるため、なかなか「病気」と認識されないようです。

こちらが参考になります

 

ものすごく自分勝手で頑固になる、ということか。

そういう老人はよくいますよね。

程度の差こそあれそういう人は、前頭葉や側頭葉の神経細胞が壊れ始めているということですかね。

 

前頭側頭型の認知症は比較的若年(50~60代)で発症しやすいようですが、

それでもつまり高齢になればなるほど前頭葉や側頭葉が壊れた人が多くなるのでしょう。

すると、高齢者が増えるのに比例して認知症によって万引きなどの犯罪を犯してしまう高齢者も増えるということか。

他人のものと自分のものの区別がつかなかった母

私の母は「アルツハイマー型」と診断され、

とくに性格が変わったということはなかった

(一時的に怒りっぽくなったことがあったものの、薬を減らしたらもとに戻りました)

ので、「前頭側頭型」の兆候はみられませんでしたが、

それでも「万引き」一歩手前のことは何度もやったことがありました。

 

まだ元気で歩けたころ。

家に閉じこもっていると母はもちろん私もストレスがたまるし、

少しでも稼ぎが欲しかったので、

母をぱちんこ店に連れて行っていた時期があります。

 

私の隣でぱちんこを打たせるか、それができなくなったら休憩コーナーで座らせていたりしていました。

(その結果失踪されて警察沙汰になったことは以前に書きました→認知症の周辺症状の話②~徘徊が始まった~、→認知症の周辺症状の話③~徘徊で警察に出動依頼、そして・・~

パチ屋の休憩コーナーにはよくマンガが置いてあるじゃないですか。

それをパラパラめくったりしながらぼ~っと座って過ごしていた。

 

で、パチ屋から帰宅し、母を着替えさせようとすると、

上着のポケットになにかカタいものが入っている。

なんだこれ・・と取り出すと、さっき行ったパチ屋の休憩コーナー備え付けのマンガが1冊出てきた。

 

えええ・・・なんで?

べつにマンガが好きなわけでもないので、欲しいから持ってきた、というわけではないはず。

どうやら手に持っていたマンガを、自分のものと勘違いしてポケットに入れてしまったようでした。

 

これはまずいなあ。パチ屋の人が、

マンガが1冊足りない→防犯カメラをチェック→私の母が犯人→通報

という対応をとったなら(パチ屋の人もそんなにヒマじゃないでしょうが、もし万一)、

私の母も犯罪者扱いされたかもしれない。

いろんな意味で気持ち悪いのですぐにパチ屋に戻ってマンガを返してきました。

 

これも他人の所有物を窃取したととらえるなら万引きですよね。

このように前頭側頭型認知症でなくとも認知機能の低下によって、

自分のものと他人のものの区別がつかなかったりお金を払い忘れたりで

万引きをしてしまうケースは多いでしょう。

 

この点は高齢者の犯罪を取り扱ううえで非常に重要なことではないでしょうか。

わが地域のローカル新聞

私は地域のローカル新聞を購読しています。発行部数は4万部ほどらしい。

いわゆる引きこもりと同じくらい社会との接触が少ない私にとっては、

情報源としてそれなりに役立っています。

 

地域の情報はともかく、刑事事件の報道については基本的に

どうでもいいようなことばかりが実名で詳細に報道されている。

酔って他人の胸倉をつかんで暴行で逮捕とか。地元の警察が逮捕した件はどんな微罪であっても実名報道してる。

 

で、高齢者の万引き事件もよく載っているのです。

それもすべて実名。80歳のおばあちゃんがスーパーで800円相当の刺身を万引きした・・・とか、

かなりしょっちゅう報道されている。

 

私は権力者や公務員や聖職者以外の犯罪については実名報道はいっさい必要ない、と考えているのですが、

なんでもかんでも逮捕されたら報道、という硬直した姿勢には大いに疑問をもちます。

さきほども言ったようにとくに高齢者の場合、認知症などの病気によって「万引き」しちゃった

ということもあるのだから、

逮捕されたというだけで犯罪者として実名を報道する、

というのは、ジャーナリストとしてはある意味「手抜き」じゃないか。

「80歳○○容疑者を万引きで逮捕」のあとに示談が成立し不起訴、となった場合でもそこまでを続報として報道することはまずない。

これはおかしいでしょ。

「80歳を逮捕」(実名ナシ)→常習犯なので起訴→有罪判決(実名報道)ならばまだわかるけれども。

 

おそらく「万引きで逮捕」と実名報道された人の中にも、

実は認知症が原因で万引きしたという人もたくさんいたでしょう。

そこまで追ってちゃんと報道しろよ。それができないならそもそも報じるなよ。

 

警察が逮捕して発表したからそのまま報道、という、

バカでもできるチョロい仕事をしている新聞社には潰れてほしいと心から思っていますが、

なんにしろ病気が原因で万引きをしたのであるなら

刑事罰を与えてもなんの意味もないし、実名報道なんてもってのほかではないでしょうか。

 

新聞をはじめマスコミは高齢者の犯罪や事故に関してそこまで考えて報じていないので、

報道にふれるときには注意しなければならないと思います。

みんなが認知症への理解を深めることが必要では

マスコミだけでなく社会全体の認知症への理解が深まらないから、

認知症によって犯罪を犯した人に刑事罰と社会的制裁を与えてしまう事態が起こってしまうのではないでしょうか。

 

高齢者が万引き→店員さんが捕まえた→話をするとなにかおかしい・・となったときに、

「ひょっとして認知症?」というふうに思い当れば、

子どもが万引きしたときのように親族を呼んで弁済してもらって済ませるとか、

とにかく「逮捕」せずに済ませることも多くなるのでは。

 

警察も、高齢者が万引きした・・などという知らせをうけたらまずは「認知症かも?」と疑う意識があれば、

微罪(小売店にとっては万引きは微罪じゃないでしょうが)で逮捕して新聞社に発表、

などということをするべきかどうか、と考えることができるかもしれない。

 

それに、店員さんなどが認知症についての理解をもっていれば、

挙動をみて「あ、あの人はひょっとして・・」と判断して、

気をつけて見守る、ということもできるようになるかもしれないわけで、

認知症高齢者の犯罪を防ぎ、認知症をもつ人を不当に罰しないためには

社会全体が認知症についてよく理解する、ということが重要なのかな、と思います。

 

ともかく、認知症をもっているのなら刑事罰を与えてもまったく意味がないので、

そういったことが起こらないような世の中になればいいと思います。

 

念のため書いておくと、万引きされる小売店は相手が認知症なら泣き寝入りするべき、とは思いません。

私もサラリーマン時代に万引きや食い逃げの対応をたくさんやりましたから、その深刻さはよくわかります。

ただ、ふつうならば刑事罰を与えて事の深刻さを思い知らせることも必要ですが、相手が認知症であれば逮捕してもらって懲役に行かせたところで反省もしないし誰も得しないので。

 

まあ、そうすると認知症を装って罪を逃れようとする人も出てくるでしょうから、

非常に難しい問題ですね。

 

それに、認知症で万引きするかも、と思って認知症の人を家や施設に閉じ込めようとしてしまうのも

問題があるわけで、いちばんいいのは

そこらじゅうに認知症高齢者が歩いていて勝手なことをやってるけれども、

周囲の人がうまくフォローすることができている・・

という社会を目指すことなのでしょう。

(関連記事→「認知症フレンドリー社会」とは?)。

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