9月末、厚生労働省がギャンブル依存症の実態を把握するため、
成人1万人を対象にした2017年度の面接調査の中間結果を発表した・・
という報道をみました。
→日本経済新聞 「ギャンブル依存症疑い320万人 厚労省推計、諸外国と比べ高く」
もういちいち言及する必要もないと思うんですけど、
どうしてこう平気でテキトーな数字を発表できるのか・・・。
もはや「だからどうした」というしかない調査結果
同じような話は過去にも記事にしています。
→カジノ合法化~ギャンブル依存症患者は本当にそんなに多いか?~
今回の「320万人」という数字は、
住民基本台帳から無作為に抽出した1万人を対象に面接、4685人分の有効回答を得た・・そうです。
のこりの5315人はなんでハネられたんですかね。
(そのへんについてわかる資料を厚労省のHPなどでさがしたんですが見つけられませんでした)
「面接」というからには電話ではなく調査員と回答者が対面で話をして回答を得た、
ということだと思われるんですが、書面での調査なら無効回答が多くなるのはわかるとしても、
面と向かって話をしたのになぜ半分以上が無効になったんでしょうか。
1万人のうち調査に応じたのが4685人だった、ということなのか。
それとも、「こんな調査アホらしくて相手にしてられるか!」
という人が多くて協力的な回答が得られず、そういうのは全部無効にした・・のか。
もしくは、ギャンブルのギャの字も知らないような人は排除したのではないか?
いすれにしろ、サンプルはたったの4685人。
ここから導き出した結果を人口に当てはめるなら、
4685人のうち、ひとりでも「疑い」の人が増えれば、
成人人口換算で1万8千人くらい「疑い」の人が増えちゃうことになる。
そう考えれば、サンプルが少なすぎる、というのは明らかでは。
これはもうアイムジャグラーを1000ゲーム回してビッグ回5回とバケ5回だったからって
「設定6だな」とか断言しちゃうのと同じレベルの戯言、といえるでしょう。
どんな数字が出ようが「深刻だ」「問題だ」という見方を変える気はない
そして、仮に「疑い」の人が10人、つまり18万人だったとしても、
ギャンブル依存症を問題にしたい人たちは、
「ギャンブル依存症18万人!深刻さは相変わらず」とか言うでしょう。
報道によると、2013年には536万人だったことについて、
担当した研究班は「調査方法が違うから増減は評価できない」とか言っている。
なぜ、調査方法を変えたのか。なぜ、増減を評価できるように同じ方法でやらなかったのか。
「2013年の調査方法には問題がありました。536万人というのはまちがいでした」
と言うのならわかるけれども、役人というのは誤りを認めることができない人種のようです。
536万人という2013年の数字が間違っていないのなら、ぱちんこ業界を狙い撃ちにして
縮小させた作戦が奏功しているということだろうし、
間違いだったのなら
「あれは間違いでした。税金を使った調査でこんな無駄なことしてすみませんでした」
と謝るべきでは。
そういう分析をしないのなら、数字を出しても意味がないでしょう。
民間企業なら、客数なり売上なり利益なりが増減したら、
「なんでそうなったの?」と訊かれるのが当然、
それで「なんだかわかんないけど増減しました」
「調査のために会社のカネをさんざん使いましたけど、理由は分析できません」
と言えば、無能、タワケの烙印をおされるのは必定。役所にはそういう感覚はないんでしょうね。
いずれにしろ、仮に大幅に減っても変わらずに「深刻だ」と言うだけ、
増減の原因については「比較できない」と言うのでは、
いったいなんのために調査しているのか。
生涯で「疑い」状態の経験者が3.6%、過去一年以内での経験者が0.8%
報道によると、「生涯でギャンブル依存症の疑いの経験者」は、3.6%で成人人口換算320万人。
「過去1年以内にギャンブル依存症の疑いの経験者」は、0.8%で成人人口換算70万人、だそうです。
つまり、「前はけっこうギャンブルやってたけど、もうやめたよ」
という人も含めて320万人、ということですね。
で、いまリアルタイムでギャンブル依存が疑われる人、というのが0.8%。
70万人って言われるとなんか凄く多い気がしますけど、
0.8%って言われると「たったそれだけなのに、なにが問題なの?」という感じで、
やはりギャンブル依存問題はあくまでもミクロな、個人的な問題、という気がしてきます。
アルコール依存症患者が多い
(算出方法により諸説あるようですが、100万人とも200万人とも。「疑い」を含めればその数倍)
からアルコール販売に規制を・・とはならないのに、
なぜ、ギャンブルの場合はぱちんこを規制する話になるのでしょう。恣意的なものを感じますよね。
アルコール依存の場合のように、あくまでも個別に対応するべきです。
今回はどんな基準をつかって「依存症疑い」を判定したのかがわかりませんが、
「疑い」の人0.8%のなかで、
「ギャンブルのために自己破産した」とか、
「ギャンブルのために離婚、一家離散した」とか、
「ギャンブルのために会社の金を横領した」とか、
「ギャンブルのために会社を首になった」とか、
「ギャンブルのために窃盗事件を起こした」とか、
そこまでいかなくても、なんらかのかたちで本人が「困った」「なんとかしたい」
と思っているというケースはいったいどれだけあるのでしょうか。
おそらくは0.8%よりも圧倒的に少なくなるでしょう。
ギャンブル依存問題に関してほんとうにやらなければいけないのは、
上記のようにほんとうに困った状況におかれている人たちの救済と、
そういう人をつくらないための
「ギャンブルは基本的に負けるもの」ということをもっと知ってもらう啓蒙であって、
依存症でもなんでもない人を依存症扱いし、
それをぱちんこ業界のせいにして業界を縮小させることではないと思うのです。
この調査は定期的に実施されるようですが、
こんな調査なら税金の無駄遣いなのでぜひやめていただきたい。
そして我々は、こういう役所のいいかげんな仕事、いいかげんな発表に
惑わされないようにすることが必要では、と思います。