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「認知症は水で治る」はほんとうか

老人保健施設(老健)にはいっている母の面会に週2回ほど行っています。

入っているのは「認知症フロア」で、周りの入所者も全員認知症。

老健ですから、ちょくちょく顔ぶれが入れ替わるんですけど、

そのおかげでさまざまな症状の認知症のお年寄りをみることになります。

しかし、世の中には、同じ年齢でも認知症にならずに暮らしているお年寄りもいる。

この差はいったいどこから生まれるんだろう。

ということで、最近の目下の関心事は「どうすれば認知症になるのを防げるか」ということなのです。

私の場合、このまま独身で終わる可能性が激高なので、

ひとりで老後を迎えたときに、認知症では非常に困ることになります。

母が認知症になるまではそんなことは1ミリも考えませんでしたが・・。

「認知症は水で治る」?

認知症を防ぐ、改善するという本や情報は恐ろしいまでの量があふれていますね。

もはやダイエット本と同じくらいあるんではないでしょうか。

で、私もたまに認知症関連の書籍を読んだりするので、

少しづつそういう本のレビューを書いていこうと思います。

今回は、竹内孝仁著「水をたくさん飲めば、ボケは寄りつかない」(2013年、講談社α新書)。

著者は医師で大学の教授です。


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けっこう売れているようですが、私がいままでに会った医師のなかには

こういうことを言う人はひとりもいませんでしたね。

 

その主張するところは・・・

・認知症は脳の病気ではなく、うつ病や統合失調症などと同じ「心の病気」。

・認知症は記憶障害ではなく「認知の障害」。家族の顔がわからなくなったりするのは、忘れたのではなく、家族を家族と「認知」できなくなっているだけ。

・熱中症などの脱水での意識障害と認知症は似ている。水分を1日1500ccとることにより覚醒水準があがり、認知症の症状は改善する

・脳の萎縮は病気ではなくただの老化。萎縮しても認知症の症状が出ない人もいる。

・水をたくさん飲んで覚醒水準があがることにより異常行動は改善する。異常行動がなくなれば誰も困らないので、認知症は治った、と言える。

・認知症は心の病気なので、治療や薬や脳トレではなく、ケアで治る

ものすごくざっくりですが、こんな感じでした。

脱水で意識がもうろうとする、だから水を飲め、というのはわかる

つまり、熱中症と同じで、水分が不足すれば意識障害になる。

だから、水を十分飲めば意識が覚醒して、認知症の異常行動(とされているもの)

は治る、異常行動がなければ、物忘れがあってもそれは誰でもあることであるので、

認知症ではなくただの老化だ・・ということです。

こう言われると、たしかにそうなのかなという気もしてきます。

熱中症で意識がもうろうとするのは、私も子供のころに経験したし。

尿失禁の心配は逆に減る?

かといって水をたくさん飲ませると尿失禁が増えて介護者はたいへんになるんじゃないか・・

という心配は無用だと説きます。逆に、「水を飲めば尿失禁は治る」そうです。

水分が足りずに覚醒水準が低いと、括約筋のコントロールがうまくできず尿を漏らしてしまう。

こどものおねしょも、寝ぼけて漏らしてしまうだけ。水分によって意識レベルがあがれば

尿失禁はしなくなる・・・とのこと。

水・メシ・クソ・運動、4つのケア

水分を充分にとれば、意識がはっきりし、異常な言動がなくなり、便秘も解消し、

体調がよくなる。さらに栄養を充分にとり、適度な運動を行えば、認知症は

治る。これを著者は「水・メシ・クソ・運動、4つのケア」と呼んでいます。

思い返してみると、私が母を自宅で介護していたころは、

便通はわるくなかったものの、たしかに水はあんまり飲んでなかったし、

食事はちょっとしかとらないし、運動はほとんどしていませんでした。

著者は、特別養護老人ホームでの成功例を挙げて、

その理論の正当性を主張しています。

当然だが、ずべての認知症患者に有効なわけではない

読んでみて、言われてみればたしかに、という納得できる部分は多かったです。

「異常な行動には必ず理由がある」「認知症は精神疾患」と著者は言いますが、

私の母の異常な行動(弄便や異食、夜間の不穏など)は、

一時期だけ激しかったけれどもすぐになくなったわけで、

そうするとやはり異常な行動は「脳の病気」によって引き起こされるのではなく、

一時的に精神状態が悪くて起こったんだと考えられる。

 

しかし、万人に有効な医療やケアというものは存在しえない。

著者も、「すべての認知症が治る」とは言っていませんが、

水分をとることができない高齢者もいます。

 

たとえば心不全があると、心臓への負担を軽減するために

水分を制限される場合があります(水分をとると血液量が増え、心臓の負担となる)。

私の父がそうでしたが、すぐ息切れするので運動もできず、

水を飲めないので便秘になり、便を出そうとしていきむと血圧が上がってさらに心臓が苦しくなり、

胃や腸の血の巡りも悪いので食欲も低下するので、

「水・メシ・クソ・運動」のすべてがうまくいかない状況になっていました。

高齢者の場合いろんな病気を抱えていることが多いので、

こちらの病気を治療するとあちらの病気が悪くなるとか、

こちらの病気があるからあちらの病気の治療ができないとか、

そういうことがけっこうあるんですよね。

 

著者も、「心不全や腎不全で水分を制限されている場合は、この限りではない」と、

一言だけ触れていますが、だれにでも有効な治療やケアというものはありえない。

こういう本とか、新薬とかの話に触れるときには、これを念頭に置いておかなければ

ならないと思います。そういうことがあるから、私がいままでに会ったお医者さんはだれも

「水分を増やせ」と言わなかったのかもしれません。

水を飲んでくれない

あと、思ったのは、水を飲んで~と言っても素直に飲んでくれない場合が多いということ。

そういう場合、著者は、体が水分を要求しているタイミング

(たとえば朝起きたとき、運動した後など)で飲んでもらう、

家族が一緒に飲む(集団で飲む)、手の届くところに飲み物を常に置いておく、

コーヒーやジュースやゼリーでもよい・・と言っています。

 

しかし、この手法で一日1500cc飲ませるのはたいへんな手間でしょう。

飲み物を渡してゴブリゴブリと自分で飲んでくれる高齢者ならいいけれど、

私の母のように、飲んで、と言っても飲まない、飲んだとしてチビリチビリしか飲まない、

となると、相当な時間をかけなければ1500ccは無理です。

著者は「介護士に1500ccの水を飲ませるように頼め」と言っていますが、

とてもそんなこと頼めないなあ・・というのが正直なところです。

とりあえず、できるだけ実践してみる

しかし、なるほどたしかにそうかもしれない、というところはかなりあったので、

私もできるだけ実践してみようと思います。

自分で気をつけるのはもちろんですが、母との面会のときにも

必ずなにかを飲ませるようにしてみたいと思います。

毎日はできないので効果は検証できませんけど、

私の母は内臓疾患はないので、水を飲ませるだけなら副作用はなさそうだし、

やってみるだけはやってもよさそうです。

今後も認知症関連の書籍についてレビューしていきます。

 

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