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「アルツハイマー病は確実に治せる」はほんとうか

文藝春秋2017年8月号に、認知症の「治療、予防、介護の最先端」という

特集があり、そこにあった「アルツハイマー病は確実に治せる」という記事が

非常に興味深かったので記事にしてみます


amazon.co.jp 文藝春秋 2017年 08 月号 [雑誌]

アルツハイマー病は罹ったら最後、不治の病、というイメージだが・・・

いうまでもなく、「アルツハイマー病」とは、さまざまな様態がある「認知症」のなかで

最も患者数が多い(記事中では、67.6%がアルツハイマー、とされている)、

「不可逆的」といわれる脳疾患ですね。

脳神経外科での認知症の「治療」というのは、

現時点では薬によって「進行を遅らせる」というのが主、というかそれしかない状況ですね。

 

私の母も、「アリセプト」や「メマリー」、「リバスタッチパッチ」などの

薬を使いました。しかし、はっきりいって効果があるのかないのかよくわからなかった。

最初に世話になっていた医師は、「アリセプトが効いてるから進行が遅い」

と言っていましたが、結局、父が亡くなったとたんに猛烈に進行したので、

(どちらにしろ、いつか効かなくなるんですけど)やはり薬の効果はかなり限定的で、

強大なストレスには敵わない程度のものなんだな、と思ってます。

ちなみに現在は認知症の薬は一切使っていません。

 

このように、薬による治療では、進行を遅らせる効果は少しはあるものの、

もちろん根治はしないわけですが、

今回の記事では、理化学研究所脳科学総合研究センターの西道隆臣氏が、

ノンフィクション作家の柳田邦男氏のインタビューにこたえ、

近い将来、アルツハイマー病は確実に治せるようになる、という旨を話しています。

「2025年までにアルツハイマー病の予防と効果的な治療を実現したいと考えています。予防策さえ確立できれば、最終的にはアルツハイマー病の患者数を十分の一に減らすことも夢ではありません」。

認知症の発症を予防する

以下、ざっくりと要約します。

 

アルツハイマー病の原因物質は、脳内にできる

「老人斑」(「アミロイドβ」というたんぱく質が主成分)と、

「神経原繊維変化」(「タウ」というたんぱく質が異常蓄積したもの)

で、この「アミロイドβ」と「タウ」を消してしまえばアルツハイマーは防げるのでは、

という推論は1980年代にすでにあった。

 

「アミロイドβ」の蓄積は、アルツハイマーの発症の20年以上前から始まっており、

一方、「神経原繊維変化」を引き起こす「タウ」の蓄積開始は、

軽度認知障害(アルツハイマーの前段階)の発症の時期と重なる。

「アミロイドβ」が蓄積しても、「神経原繊維変化」が現れなければ、

アルツハイマー病は発症しないということがわかってきた。

 

「アミロイドβ」が「ヤクザの親分」で、

「神経原繊維変化」が「ヒットマン」、みたいなもので、

親分が指示を出して、ヒットマンが脳を攻撃して認知症が発症する・・という関係なので、

ヒットマンが動く前に親分(アミロイドβ」を消してしまえば、認知症は発症しない・・。

 

これまでは、ヒットマンが動いてから(軽度認知障害が出てから)

対症療法的にアミロイドβを消そうとしていたからうまくいかなかった。

そうではなく、症状が出るまでの約20年間に、いかにアミロイドβの蓄積を少なくしておくか、

という予防的治療法の確立を目指して取り組んでいる・・。

原因物質を「消去」ではなく「分解」する

で、この「アミロイドβ」が蓄積するのをどのように少なくするか。

これまでの治療はアミロイドβを「消去」することを目指していたが、

西道氏は脳内で「分解」すればよいと考えた。

 

そして、脳内の酵素「ネプリライシン」がアミロイドβを分解することがわかった。

この酵素は加齢により発現しなくなってくるので、

歳をとると必然的にアミロイドβが溜まってくる。

 

つまり、「ネプリライシン」を活性化させれば、アミロイドβの量を減らすことができる。

で、2005年には「ネプリライシン」を活性化させる物質を発見。

脳から分泌されるペプチドホルモン「ソマトスタチン」。

 

ここまではわかった。そして、具体的な治療方法は、もう80%達成している、と語ります。

遺伝子治療と経口薬

治療法は大きく分けて二つあり、

ひとつは外科手術によって「ネプリライシン」を活性化する遺伝子を脳に直接入れる遺伝子治療。

現時点では外科手術が必要だが、マウス実験では注射によって遺伝子を流して成功していて、

人間でも注射によってアミロイドβを減らせるかもしれない。

この治療なら、アルツハイマー発症後の認知機能低下も改善できる可能性がある

 

もぅひとつは、経口治療薬。

「ソマトスタチン」の分泌を促す薬。

これについては、脳血管関門(脳をウィルスなどから守る細胞)を通過し、かつ「ソマトスタチン」を

活性化させる物質というのはまだ少ないので、まだまだこれから。

アミロイドβの蓄積をどうやってはかるのか

という感じの内容の記事でした。

で、アミロイドβを減らせばよい、のはわかりましたが、

どうすればアミロイドβの蓄積を早期把握することができるのか。

これが「アルツハイマー病克服に立ちはだかる最大の壁」と、西道氏はおっしゃっています。

現時点では、脳内にアミロイドβと結合する陽電子を静脈注射をして、それが発光することにより

アミロイドβを検出する、とか、髄液を取り出してそこに含まれるアミロイドβとタウをはかるとか、

費用も手間もかかる方法しかなく現実的でない、とのこと。

これを、血液検査でわかるようにする、というのが課題だそうです。

 

というように、どんどん研究はすすんでいるんだけれども、

「安価な検査と安価な治療薬の開発が急がれる」という段階。

 

なかなか希望のもてそうな話でしたが、気になった点がありました。

研究費が少ない?

西道氏によると、

「日本はアルツハイマー病研究費が非常に少ないので研究者にとっては厳しい環境です。アメリカの1400億円に対し、わずか60億円。・・」

「開発が難しく、投資した分の回収が難しい」という理由で、日本の製薬会社は認知症など脳神経系から手を引き始めている・・」

だそうで、私はそんな事実は知らなくて、「なぜ?」と思いました。

 

60億円という数字がどこから出てくるのか詳細はわかりませんが、

このままでは将来は認知症患者だらけになり、国が立ちいかなくなることが確実視されているのに、

軍用機の一機も買えない程度のおカネしかつぎこんでいないとは驚きです。

 

カネの使い道を間違っていないか、政治家や官僚はちゃんと考えてほしいですね。

ちょっと話が外れるけれども、よく考えればただの私的な政治団体である自民党などの政党に

政党交付金などというカネをばらまくくらいなら、認知症研究にそれを回したらどうか。

平成28年の自民党への政党交付金は172億円!

一般の党員からカネをとり、企業から献金を受け、その上さらに税金から交付金までもらう。

さらに、共産党が受け取り拒否したぶんは他の党で山分けしてるらしいですね。おかしくないですかね。

国会議員に税金で給料を払うのは納得するけれども、

なぜ私的な団体に税金でカネを払ってやらなければならないのか。

政党を支持する人が個人的に払えばいいだけじゃないか。

 

さらに、製薬会社が熱心でないというのも驚き。

前に→物忘れ改善医薬品は有効なのか

で記事にしたような薬を出しているし、

西道氏のおっしゃっているように、

「将来的にはアルツハイマー病を制した者が業界を制す」のは

素人が考えても明らかなわけで、

私は製薬会社も懸命に取り組んでいるものと思っていたのですが・・・。

製薬会社も、結局は目先のことしか考えていない、ということなのでしょうか。

 

ともかく、いろいろ課題はまだあるようですが、

一刻もはやくアルツハイマー病の予防・治療が確立されることを祈りたいです。

 

追記:よく調べたら、西道氏著の書籍が出ていました。ウカツにも知りませんでした。早速買って読みます。↓


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