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アルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」は承認されるのか

現在は認知症のため会話もできない私の母が、アルツハイマーと診断されてから長いあいだ、さまざまな抗認知症薬を使用していたことはいろいろな記事で書きました。

認知症と抗認知症薬 

なんでもかんでもすぐ薬に頼るのは・・・

私の父がとにかくなんでも薬に頼ろうとする人だったこともあり、母にはさまざまな薬を試していました。そのおかげで進行がだいぶ遅かった、というのはたしかにあったんでしょうが、のんでいた時期は明らかに怒りっぽくなったり幻覚をみたりといった副作用と思われることが多かったし、父が亡くなったとたんに雪崩をうつように症状がすすんだということも体験したので、薬にそれほどの意味はあるのかな・・・という気持ちもあるのです。

それに、現時点で存在する抗認知症薬は「進行を一時的に遅らせる」というだけのことであり、それで治る、というものではないので、ひとたび「アルツハイマー」と診断されればもう絶望しかない。だったらよく言われるような「早期診断で早期に治療開始するのが大事」なんてのも、いやいやそれを早く知ったところで絶望するだけだろ、と思っちゃうのです。

しかし、そのような「アルツハイマーは『絶望の病』である」という現状を打ち砕いてくれるかもしれない薬が現在、日米欧で承認申請されています。現時点ではどうやら「エビデンスが不十分」とも言われていて微妙なようですが、これが実用化されればまさにアルツハイマーの歴史を変えるということになるんでしょう。米バイオジェン社と日本のエーザイが共同開発した「アデュカヌマブ」。

アルツハイマーの原因物質への「抗体」

エーザイが開発し1999年に登場した「アリセプト」。私の母も長いことのんでいました。

アルツハイマー病になると神経伝達物質「アセチルコリン」が減少して記憶障害が起こるのですが、そのアセチルコリンを脳内で分解しちゃう酵素「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻害することによりアセチルコリンを増やして記憶障害を改善しようというのが「アリセプト」の仕組みでした。

現在は、アルツハイマー病は「アミロイドβ」という老廃物や「タウ」というタンパク質が脳にたまることで脳細胞の死滅につながるという流れで起こるとされていて、アリセプトはその「原因」には作用しないので、つまり認知症を予防したり病気そのものを治したりといった効能はなかったのですね。

 

対して「アデュカヌマブ」は、「アミロイドβ」に対する「抗体」を患者に投与し、アミロイドβをやっつけてしまえ、という仕組みであるらしい。

弱毒化した病原体を体に入れると抗原抗体反応によって抗体がつくられ、その抗体が新たに入ってきた病原体をブロックして病気にならない・・・というのが「ワクチン」の仕組み。この仕組みを「アミロイドβ」にあてはめ、アミロイドを体内に入れることによってアミロイドをやっつける、という「ワクチン療法」が以前には試されたらしいのですが、それは脳炎などの副作用が出て上手くいかなかった。それなら「抗体」そのものを薬にしたらどうかということで「抗体薬」の開発が始まった。

実はアミロイドβは脳内だけでなく体のいたるところでつくられていて、それに対する抗体も自然につくられている。アルツハイマー患者はその抗体が少ない。ならその自然に発生する抗体を薬に・・というのが「アデュカヌマブ」(っていう理解でいいのかな。後述する本で知ったばかりなので。間違っていたら許して)。

 

これが理屈どおりにほんとうに効くのならとてつもなく凄い。脳細胞が死滅して脳がしぼんでしまったあとではもちろん効果はないんだろうけど、アミロイドがたまる以前、もしくはアミロイドがたまっててもそれによって脳細胞が死滅する前に投与されれば、少なくともアミロイドが原因によって引き起こされる認知症にはならない、ということなわけですね。

そうなれば、早期診断が重大な意味をもつことになります。根治できないんだから早期にわかったところで絶望するだけ・・・とはならない。早期に「アミロイドがたまってる」とわかればそれだけ早く投薬を受けられ、認知症の発症を抑えることができる。

これはなんとか実用化されてほしい・・・のですが、いまのところ承認されるかどうか微妙みたい。

今回この話題を記事にしたのは、先日読んだ、ノンフィクション作家の下山進氏の著書「アルツハイマー征服」が猛烈に面白かったから。

Amazon.co.jp アルツハイマー征服

アルツハイマー研究の初期の初期から、アルツハイマーを引き起こす遺伝子の探究と発見、研究用にその遺伝子をもたせた「トランスジェニック・マウス」の開発、アリセプトの創薬の経緯、ワクチン療法を経て抗体薬「アデュカヌマブ」の開発。アルツハイマーがもう少しで「征服」されるかもしれない・・・となるまでの、人類の苦闘の歴史をえがいた大作ノンフィクション。

患者や医師や製薬会社の研究者・経営者・・などさまざまな立場の、アルツハイマーと対峙した人たちの多くのドラマで構成されています。なかでも衝撃だったのは家族性アルツハイマーの家系に生まれた方々の話。50%の確率で遺伝し、遺伝子を引き継げば100%発症するという。トシをとればだれでも認知症になる、というのとはわけが違って、遺伝子をもってれば若いうちに発症してしまう。この方々が薬の治験に参加する話がありましたが、それに参加するためには自分が遺伝子を引き継いでいるかどうかを調べなければならない、っていうのがもう・・・。最後にあった、家族性アルツハイマーの家系にうまれた女性のスピーチは泣けて泣けて仕方がなかった。

これはアルツハイマーにかぎったことではないんだろうけど、病気を克服するためにこれだけたくさんの人が壮絶な努力をしているんだ・・ということを知り、ふかい尊敬の念をおぼえること必至(一方で、名声欲しさにデタラメな論文を発表する研究者の話とかも出てくるけど)。薬や医療への対し方についていろいろ考えさせられる。感動的なノンフィクションでした!

認知症について知れば知るほどに後悔する

この本面白かった、と言いましたが、内容は目からウロコの話が多く、自分の無知を痛感しきりでした。新薬ひとつを世に出すためにかかる手間と労力とカネが、とてつもなく莫大なものであることは想像していましたが、これほどとは思わなかった。アリセプトが出るまでの苦闘の話を読むと、「副作用があるうえにただ進行を遅らせるだけなんだろ?」っていうスタンスでいたことを謝りたくなってくる。私の母もアリセプトのおかげで進行が遅れたというのはおそらく間違いなかったことで、進行が遅れているあいだに母に対してやってあげるべきことがたくさんあったのに、どうしてそれをやらなかったのか・・という後悔も。

認知症関連の書籍などを読むとこれがつらいからほんとうは嫌なんですよ。辛い介護をいかに楽しくやるか、もしくは実際に楽しくやってます、とか、介護者の接し方次第で患者の気持も行動も落ち着く、とか、「こうすればよかったのか!」ということを知れば知るほどに、母に適切な対応をできなかったことを後悔する。

その意味で、ぱちんこがメインのこのブログでこういう記事を書いてもあまり読まれないのはわかりつつも、書かなきゃならない、と思ってます。私も、母がこうならなければ認知症などは他人事だと思っていた(子どものころに映画「恍惚の人」をみて衝撃を受けたけど、こういうのは特別な病気なんだと思っていた。まさかそれがありふれた病気になり、自分の母がそうなるとは・・・)し、なにも知ろうとはしなかったわけで、そのせいで母がそうなってからパニックになってしまった。

まあ、これから自分がなるかもしれないし、兄弟がなるかもしれないので、今からでも遅くはない。もっといろいろと勉強しておこう・・と思っているところ。今回紹介した本は「勉強」のつもりでなく読んでもとっても面白いのでオススメしておきます!

 

それと、「アデュカヌマブ」は、もし承認されたとしても薬価が猛烈に高くなるらしい。ひと月100万円とかになるそうで、予防のために長期間のむ・・となると保険でカバーするのが厳しいということに。

しかし本にも書いてあったように、認知症の患者が減れば介護にかかる費用が圧倒的に圧縮されるわけで、社会保障費が減ると思えばそっちにはガンガンにカネをつぎ込むべきなんでしょう。そこは政治ががんばってもらいたい。

アメリカ食品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」を承認!

アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が日本でも承認される見通しに。

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