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続・高齢ドライバーの交通事故について思うこと

高齢ドライバーによる事故が起こるたびに盛り上がる、

「高齢ドライバーの事故が最近多い」

「高齢者は免許の自主返納を」という話。

先日、90歳の女性が運転する車が事故を起こして4人が死傷、という痛ましい事故が起こりました

「赤信号だが歩行者いないので発進」90歳容疑者を逮捕

ほんとうに悲しい事故となり、やりきれない気持ちになりましたが、

ちょっと気になることもありますので書いておきます。

年齢にフォーカスした報道は危険だと思う

高齢者の運転については以前にも記事にしていて

高齢ドライバーの交通事故について思うこと

高齢ドライバーの交通事故報道の偏向に惑わされないで!

加齢による衰えにより運転するには危険、という高齢者もたしかにいるが、

ことさらに「高齢者の運転は危険である」と報道されることには違和感をおぼえる、

と書いたのですが、

今回の事件についてはどうか。

 

報道されてる内容をみるかぎり、

これって若い人でもやりそうな事故じゃないでしょうか。

見送ってた人に申し訳なくて早く立ち去ろうと思い

赤信号なのはわかっていたが「行けると思っ」って行ったら

歩行者が目に入ってあわててハンドルを誤操作した・・・

ということで、そもそも赤信号を無視したことが最大の問題であるのに、

これをいちいち「90歳の女が」「90歳が」と

高齢であることにフォーカスして報道しているようにみえます。

現時点では「90歳」というワードで検索するとこの事件がトップに出てくるし。

 

こういう身勝手運転を「事故を起こしやすい高齢ドライバーの特徴」

などいう言説も見受けますが・・・

いやいやいや、若いやつ(とくに中年くらい)のほうが

圧倒的に身勝手運転は多いだろ!

 

実際、今回事故を起こした人は

免許の更新で認知機能の検査を受けてちゃんとパスしていたらしい。

つまり行政が「この人は大丈夫」とお墨付きをあたえていたわけで、

そこを考えると「90歳にもなって免許返納せず運転するからこんなことに・・・」

みたいな論調で報道するのならば、

認知機能の検査自体が無意味、もしくは役に立ってない

ということのほうを問題にするべきでしょう。

 

私は、「赤信号だけど行けると思っ」って信号無視をし、

結果として重大な事故となってしまったこのニュースを、

「高齢者が免許返納せず運転していたからこうなってしまった」

というふうに報ずることは、非常に危険なことだと思っています。

「高齢だからバカな運転をする」「高齢だから間違える」「(若い)自分にはそんなことありえない」という思い込み・慢心が危険

いつだったか兄(当然私より年上だがまだ50代)

と「アクセルとブレーキの踏み間違い」の話になり、

私が「運転中に予期せぬことになにかにビックリしたりすると若くても間違えるらしいぜ」

と言うと、彼はこう言いました。

「そんなことありえねえだろ。ふつう間違えるか?爺さんとか婆さんだから間違えちゃうんだろ」。

 

ああ・・・こういう、想像力の欠如した人間がいつか交通事故を起こすんだな、と思いました。

自分だって間違えて事故を起こすかもしれない、と想像してみることができない。

 

そして、自分もいつか必ず「高齢ドライバー」になる、ということが想像できないので、

高齢ドライバー事故の報道にふれても

「ジジババに運転なんかさせるな」というひとことで片付けようとする。

 

90歳が事故を起こしたからといって、

まるで事故の原因は年齢そのものにあるかのような報じ方をすることは、

こういう想像力欠如人間を量産することにつながると思うのです。

つまり、

「そんなバカな事故はジジババだから起こすんだ(俺にはそんなことはあり得ない)」

「アクセルとブレーキの踏み間違いなんてジジババだからやっちゃうんだ(俺にはそんなことあり得ない)」

という思考になり、

「自分には関係ない」、となる。

 

こういう人間は運転者としては非常に危険です。

「気をつけないと自分もやるかもしれない」と考えることができないのですから、

講習でなにを教えたところで無駄です。

 

たとえば昨年6月に神奈川県大井町の東名高速で煽り運転の末に車線に車を停車させ、

追突されて2人が死亡した事故。

こういう報道にふれて、

「気がくるってるバカの犯罪(でも、俺はマトモだから大丈夫)」

で片付けてしまう人ばっかりだから、

その後も煽り運転は減らないのです。

 

私の日常でも、(あれほどに煽らずとも)

車間距離をとらずに後ろにピッタリくっついたり、

見通しの悪い片側1車線の道なのに黄色い線を越えていきなり追い抜こうとしたり、

バカな運転(本人には悪意がない場合が多いからなおさら問題)

をする人間にはしょっちゅう遭遇するわけです。

おそらくこういう人は、

自分が東名の煽り事故の犯人とたいして変わらないことをやっている、

という認識はまったくなくやっているのです。

煽り運転の事故の報道などにふれ、

「ああ、俺も知らず知らず車間距離を詰めてまるで煽っているような運転になっちゃってるかもしれない」

と自分におきかえて考えてみることができているなら、

そんな運転をする人はそうそう多くないだろうし、

ドライブレコーダーがバカ売れ、みたいなことにはならないはずですが、

はっきりいって煽りみたいな運転をするドライバーはそこらじゅうにウジャウジャいる。

 

すべてが報道の在り方のせい、とは言わないけれども、

90歳が事故を起こせば「90歳が90歳が90歳が」と言い、

東名の事故のような信じられないようなバカが事故を起こせばその素性やこれまでの行状などを徹底的に調べ上げ「このバカはほかにもこんな悪いことをしてた」

というような報道をしていると、

悲惨な事故が起こっても

「自分には関係のない出来事(自分は高齢でもないしこんなバカでもないから大丈夫)」

という姿勢で受け取ってしまい、

結局事故は起こり続け、煽り運転は減らない・・・ということになるのでは。

 

今回の90歳女性が起こした事故は、

認知機能検査に合格していることからも

「トシで鈍くなっていたから」というだけの理由で起こったとは

思えないわけで、

「高齢者にありがちな慢心」ということでなく、

「誰でもやるかもしれない事故」として

(すでに赤信号になっているのに突っ切っちゃったことがある人なんて世の中に何万人といるはず)、

丁寧にその原因を報じるべきだと思うのです。

 

ともかく、

「年寄りのことをなんだかんだ言う前に、自分の運転をかえりみてみろよ」

と言いたくなる運転者は非常に多いわけで、

そういう層が悲惨な交通事故を

「明日は自分がやるかもしれない」と感じ、

他人事でなく真剣に考えるような報道のしかたをお願いしたいと考えます。

 

関連記事→「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」について思うこと

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